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本日リユースブックストアで「日出処の天子 コミックセット」 を買取致しました。

1980年から4年間、白泉社・LaLaで連載。作者・山岸涼子の描く妖艶な厩戸王子がめぐらす策略と、厩戸王子に魅せられ翻弄される蘇我毛人を中心に描かれた王朝物語です。

1983年に、第7回講談社漫画賞少女部門受賞。連載中の1984年には、厩戸王子(聖徳太子)を同性愛者として描いたことを法隆寺関係者が遺憾に思い抗議を検討…という内容の“捏造記事”が新聞に載り、後日謝罪文が掲載されるという事件が起こるほど、話題になった作品。アニメの企画もありましたが、残念ながら、計画段階で中止になったようです。

時は飛鳥時代。大豪族、蘇我本宗家の長子・蘇我毛人は、14歳のある春の日、池で泳ぐ女童に出会い、そのあまりの美しさに見惚れ、ほのかな恋心を抱きます。身分の高そうなその女童に会えることを期待して朝参にも通うようになった毛人に、父・馬子はやっと政治に興味を持ってきたと大喜びします。

朝参は、権力争いの意味合いを裏に隠したドロドロとしたやりとりが交わされており、例の女童にも出会えず、消沈した気持ちで庭へ逃れます。そこで、女童にそっくりな少年を見かけ、新たに心を騒がせます。

その春の鎮花祭にも参列した毛人。王族が揃った中、姿が見えない厩戸王子(大王の妻の同母弟の長子)を宮へ迎えにいくよう馬子にいわれた毛人は、不可思議な光景を目にし、戸惑います。王子の目の前に浮かび、勝手に開く経典…気配を感じて振り返った王子の凍りつくような眼差しに慄く毛人。そして、王子こそ、あの時の少年だと気がつきます。

10歳の子どもとは思えない厩戸王子の得体の知れない姿と気配が脳裏から離れない日々を過ごしていた毛人に、王子の住む池辺の宮から呼び出しがかかります。しばらく待たされた毛人の前に現れたのは、春の日に池で出会った女童…あの少女は、厩戸王子だったのです。

厩戸王子は、超常的な力を持ち、その不可思議さ故、実母にも恐れられ疎まれていました。天女のようなうつくしさと、非凡な教養の深さと溢れる才能、明晰な頭脳、冷静沈着な佇まいで、常に近寄り難いオーラを発している王子でしたが、彼の寂しさは、それもまた尋常なものではなかったのです。そして、特殊な力を共有できる毛人に対し、特別な感情を抱いていくようになります。

プライドが高過ぎる王子の愛が屈折していく様はあまりに切なく、どこまでも暗く硬い孤独の深さに胸が締め付けられます。

蘇我毛人は、誠実で思いやりある優しい青年。蘇我家の後継者としての責任感を持とうとしつつも、野心には乏しく、人との心のつながりを大切に、争いを好みません。それでも、愛する人のためには、時に大胆な行動に出る情熱家。そんな毛人は、様々な形の“愛”に翻弄され、結局心の底から幸せだと思えた瞬間は、とても短かったのかもしれません。

厩戸王子の孤独の根源は、穴穂部間人媛。王子の超常的な力を感知出来るのもまた特殊な能力であり、その能力を持っていたのは、毛人であり、母である穴穂部間人媛だけでした。でも、穴穂部間人媛は、王子の力を恐れ、不気味がり嫌って、その感情が我が子に対する愛を上回っていたため、避けることしか出来なかったのです。母親の愛を受けることが出来なかった王子は、心を閉ざし、歪んだ愛情表現しかできなくなってしまったのでしょう。

王子のすぐ下の弟である来目王子は、母はもちろん、兄である王子のことも愛していました。母と兄の歪んだ関係を憂い、心を痛める優しさを持ち、純粋で素直な性格です。

毛人には、刀自古郎女という妹がいました。幼少期は、美貌の持ち主でありながら天真爛漫で男勝りのおてんば娘でしたが、物部との戦の際、物部の出身である母と共に、母の郷里へ帰らされます。戦が終わり、戻ってきて妹がドキッとするほど美しくおしとやかになっていて驚いた毛人でしたが、明るさに翳りのある様子を密かに心配します。後に、厩戸王子の妃となり、山背大兄王を産みますが、その出生にはとんでもない秘密がありました。

厩戸王子が、ほんのひととき、心安らかな時間を過ごしたのは、斑鳩に宮を作ってすぐの頃でしょう。王子を弥勒仙花の生まれ変わりと崇め、影となって王子を支える新羅からの渡来人・淡水と、同じく渡来人で王子に献身的に仕える舎人の調子麻呂、八角堂や斑鳩宮を建立した司馬一族の子供で王子が才能を認めているトリ。この3人と食事を共にし、時に笑い合っていた姿は、毛人が焼きもちを焼くほどでした。

他にも、女帝になる額田部女王、その娘で厩戸王子の最初の妃となる大姫、無能で横暴な泊瀬部大王、石上神宮の斎宮である美貌の布都姫など、人間臭くいろんな意味で魅力的な登場人物ばかりです。

最終巻に収録されている続編「馬屋古女王」は、本編の二十年ほど後、聖徳太子が亡くなり、葬儀のために子供たちが揃った数日間の物語。聖徳太子の長子である山背、毛人の長子である入鹿たちの時代です。聖徳太子一族の滅亡の始まりを描いたこの作品もまた、とても切ないお話です。

力を得るために暗躍したり、権力を振りかざしたり、愛を求め報われず逆恨みをおぼえたり、寂しさに押しつぶされそうになったり…人は、なんて醜く愚かで、そして、なんて小さく弱く、愛おしいものなのでしょう。伝説の歴史人・聖徳太子の美しくも切ない愛の物語。はるか昔、華やかなる飛鳥王朝時代に生きた人々に、想いを馳せてみてはいかがでしょう?

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読み終わった本などがあればぜひリユースブックストアにお持ちください!

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